溺れる赤ん坊のメタファー
社会運動に取り組む者が知っておくべき寓話がある。「溺れる赤ん坊のメタファー」である。
それはこんな話だ。
あなたは旅人だ。旅の途中、川に通りかかると、赤ん坊が溺れているのを発見する。あなたは急いで川に飛び込み、必死の思いで赤ん坊を助け出し、岸に戻る。
安心して後ろを振り返ると、なんと、赤ん坊がもう一人、川で溺れている。急いでその赤ん坊も助け出すと、さらに川の向こうで赤ん坊が溺れている。
そのうちあなたは、目の前で溺れている赤ん坊を助けることに忙しくなり、川の上流で、一人の男が赤ん坊を次々と川に投げ込んでいることには、まったく気づかない。
これは「問題」と「構造」の関係を示した寓話だ。問題にはつねに、それを生み出す構造がある、そして、その構造に着手しなければ、真に社会問題を解決することはできないのだ。(中略)
僕たちにとっての「投げ込む男」、その一つは、「子どもが病気でも休むことの許されない会社や働き方」である。つまり、企業社会のあり方を変えなくてはいけない。
フローレンス 駒崎弘樹